§リサイクルの時代
日本もようやく大量生産、大量消費の時代に終わりを告げリサイクル先進諸国にかなり遅れてリサイクルの時代を迎えようとしている。
現在の様々な産業廃棄物とそれがリサイクルされるまでの過程や産業廃棄物の将来等を考えてみた。視点は町場の工務店レベルではあるが、全産業廃棄物の半分以上を占める建設系廃棄物の発生源である我々にとっては、住宅建築の坪単価や品格法に頭を悩ます以前に取り組まなければならない問題だと実感します。
テレビで不法投棄の産廃業者の投棄現場が流れると「まさかあのゴミの中にうちの現場から出た物は混じってないよな・・・・・」可能性はゼロではないので、とても心配なります。真剣にリサイクルということを個人単位で考えなければいけない時代が来たのではないでしょうか。
§産業廃棄物の実態
解体工事に発生する産廃と新築工事に伴う産廃とがあるが、それを最初に運搬する業者はそれぞれ違うが、最終的に行き着く先は公的な最終処分場でなければならない。
解体業者は現場で有価物(金属等)と木材、コンクリート等分別をしてそれぞれの受入先(リサイクル工場かその前段階の集積場)に搬入する。その他分別不可能な物に関しては積み替え保管場と称するところに持ち込みそこから中間処理場に持ち込まれる事が多い。以前は現場での分別をしないで全てミンチ状にして中間処理場に持ち込む事が多かったが受入れ単価の高騰や中間処理施設の少なさからなるべく現場で分別することが多くなってきた。
中間処理場では焼却したり粉砕したりして最終処分場に持ち込まれ埋められる事になる。それではリサイクルも出来ず最終処分場に埋める事も出来ない産廃(安定5品目以外の混合廃棄物等)は、どこで処理されているのであろうか。安定5品目以外の産廃は管理型最終処理場と称する所に埋められますが処理場の数が少なく全てが処理されている訳ではないようです。
それでは処理場に持ち込まれない産廃はどこで処理されているのでしょうか、それは不法投棄しかないのです。残存容量をあと1年とか半年とか示しておきながらもいつになっても満杯にならない最終処分場も不思議です。ある統計で全産廃量の10%以上が不法投棄であるというデーターを見たことがある。日本は年間4億トンの産廃を排出するとされているがその10%に当たる4000万トン(大型ダンプ400万台)のゴミが不法投棄されているとは信じがたい数字です。
2002年にリサイクル法が施行されましたが、産廃の行方に関しては何も変わってないと感じる。マニフェストもA~Dに加えE伝票(最終処分確認伝票)が追加されましたが、最終処分場の搬入権の前売り等でかえって混乱していると聞きます。
工務店レベルでは、新築に伴う解体工事を別途工事として、施主と解体業者とを直接取引きさせるケースも少なくない。面倒なことからの逃避でしょうか?
いずれにせよ、最終処分場の少なさと、産廃のたどるルートが複雑過ぎて各段階で各自の責務(マニフェストの各伝票にそれぞれが捺印すること)が全うするしくみの為自分の出した産廃の行方を追跡し最終処分されるのを排出者が自分の目で確認するのは不可能に近いものがある。
§リサイクルする事が出来る産廃出来ない産廃
☆木材
古民家の構造材はそのままの形で古民家再生や新築住宅の一部として使われるがその他の木材は細かく粉砕され、木材チップとして合板や燃料チップに姿を変えるが今では需要が少なく飽和状態である。
☆廃プラスチック
種類が多数あるが、選別する事が可能で減容固化されたRDF(再生固形燃料)になるが、RDFを燃料とするボイラーの数が少なくほとんどが結局埋められるか東南アジアへの輸出に頼る事になる。
☆金属
種類分別が容易で需要も多く産廃中ではリサイクル率はトップである。
☆コンクリート、瓦
粉砕工場で再生砕石として道路の路盤や建築物の基礎の砕石として使用されているが、公共事業の減っているの今日では余っているのが現状。
☆ガラス
ガラスとして再生できる物とそうでない物とあるが、再生できない物はガーデニングの石やインターロッキングブロックの原料になる。
☆汚泥
脱水して固化した汚泥は粉砕して再生砂となるが、市場の評価は高くはない。脱水されていない汚泥は乾燥土と混合して土砂と同様に使うことが出来る。
☆石膏ボード
新築工事時に排出される、クロス等を張っていない物で雨に濡れていなければ、紙と石膏に分離しそれぞれ再生される。解体時に排出される物は再生不可能である。
★窯業系サイディング
これも現在の所再生はされていないので埋めるしかない。
★プリント合板、ビニールクロス、グラスウール
これも再生不可能。排出される際に混合廃棄物とみなされ、安定5品目にも明記されていない為最終処分場でも受け入れ不可。
大雑把に分類してみたが、リサイクルするにはそれなりのコストがかかる。リサイクル前の品物と価格差が無くなり、リサイクル品=高級品と皮肉な結果になりかねない。また、需要と供給のバランスが取れていない現状は大手企業がリサイクルプラントの建設に大金を投じ、リサイクル産業に参入するとは考えにくい。やはり各自治体でのりサイクルプラントの建設が要求されるであろう。
§建設業に携る者として出来る事
ある解体屋曰く、「昭和初期頃の建物の解体は儲かる」。なぜかと言うとその頃の建物には無垢の木材が使用され、ビニール系の壁材も無く、排出物の9割がリサイクルにまわせるので処分費がかからないからだそうだ。また、最近の建物解体でも元請けや施主から解体の工期をもう数日もらえれば、機械を使わず人力のみで解体することが出来る。
そうする事によって現場での詳細な分別が可能になり、先に述べた混合廃棄物(処分費が一番高い)の量を極力少なくする事が出来る。よって解体費は機械壊しと大差が無くなる。
工務店や設計者は今だからこそ施主には無垢材の使用、脱ビニールクロス、脱新建材を奨めるべきだと思う。それはハウスシックや見た目の心地よさでもあるが、『ゴミにならない家』を作る事が今後の日本にとって最優先の課題のような気がするからだ。しかし今の法律(品格法等)はいかにも「その様な家は造ってはいけませんよ」といわんばかりである。
将来、法の縛りでリサイクルする事の出来ない合板ばかりで造られた建物が解体され、排出される産廃のことを国は考えているとは思えない。何とも矛盾した国である。最近のハウスメーカーの家が100年持つとは思えないが、数年後解体時期を迎えた時、まさにこれからがリサイクルの本当の正念場になるであろう。
菊池祐司
新建築技術者の会千葉支部会員